力を味方につける身体
― 重力も、身体にかかる力も、上手に使いこなす ―
私たちは毎日、知らないうちにたくさんの「力」の中で生活しています。
立つ、座る、歩く、階段を上る、物を持つ。
こうした何気ない動作にも、常に重力が働いています。
「重力」と聞くと、身体に負担をかけるもののように感じるかもしれません。
でも、重力は決して身体にとって悪いものではありません。
大切なのは、力をなくすことではなく、力を上手に受け止め、身体の中で分散させることなのです。
身体は「力を受けて、逃がす」を繰り返している
例えば、立っているとき。
足の裏には、体重と床からの力がかかっています。
その力は足だけで受け止めているわけではありません。
足首、膝、股関節、骨盤、背骨など、身体のさまざまな部分を通って伝わり、全身で受け止めています。
つまり身体は、
力を受ける
↓
力を伝える
↓
力を分散する
↓
力を解放する
ということを、日常の中で繰り返しています。
歩くことも、実はこの繰り返しです。
一歩踏み出して足が地面についた瞬間に力が生まれ、その力が身体の中を伝わり、分散され、次の一歩へとつながっていきます。
「良い姿勢」は、力が入っていない姿勢ではありません
姿勢というと、
「背筋を伸ばす」
「胸を張る」
「力を抜く」
ということをイメージする方も多いと思います。
しかし、本当に大切なのは、形だけではありません。
必要なところに力が集まり、必要なところへ伝わり、不要な力が適切に分散されていること。
これも身体にとって大切な「良い状態」の一つです。
逆に、身体の一部分に力が集中し続けると、そこだけが頑張り続けることになります。
肩だけ、首だけ、腰だけ、膝だけ。
そうなると、身体全体で力を受け止めることが難しくなってしまいます。
痛みも「力の集中」という視点から考えてみる
もちろん、痛みにはさまざまな原因があり、すべてを「力の問題」だけで説明することはできません。
ただ、身体の使い方という視点から見ると、
一部分に力が集中する
↓
その状態が繰り返される
↓
身体全体で力を分散しにくくなる
↓
局所への負担や感覚入力が増える
ということが、痛みや不快感に関係する場合があります。
だからこそ、痛い場所だけを見るのではなく、
「なぜ、そこに力が集まっているのだろう?」
と身体全体を見ることが大切なのです。
力を抜くことより、「力を逃がせる身体」へ
身体に必要なのは、いつでも力を抜いていることではありません。
立つときには立つための力が必要です。
歩くときには、前へ進むための力が必要です。
物を持つときには、支えるための力が必要です。
大切なのは、
力を使うこと。
そして、必要がなくなったら解放すること。
この切り替えがスムーズにできる身体です。
私はこれを、
「力を味方につける身体」
と考えています。
重力も、床から受ける力も、動作によって生まれる力も、私たちの身体にとってはなくすものではありません。
上手に受け止め、伝え、分散し、そして解放する。
その繰り返しが、毎日の自然な動きをつくっています。
身体の健康を考えるとき、
「どうやって力を抜くか」だけではなく、
「どうやって力を上手に使うか」
という視点を持ってみるのも、とても大切なのではないでしょうか。

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